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Gというキーは真夏には酷です

今回はコメディを一つ。

あすか先輩の「黄前ちゃん」という言い方が好きなだけみたいなところもありますけど(笑)

Gというワードがね、キーワードなんですよ。みんなG嫌いですよねえ……。

<注意点>
・響け!ユーフォニアムの二次創作です。
​・基本、TVアニメ版準拠です。

 吹奏楽部の夏場の練習は過酷だ。
 吹奏楽は音楽なのだから、文化系でしょ? という誤解があったりするが、かなりスポーツに近い。
 演奏中は日常生活ではあり得ない速度と量の息を吐く必要があり、もはやマラソンである。
 そんな酷な状態の中、汗をたらしながら、低音パートの一行は蒸し暑い教室で今日も練習に励んでいた。
「しっかし、暑いね~」
 パートリーダー兼副部長のあすかがつぶやく。
「そうですねえ」
 あすかと同じユーフォニアム担当の久美子が同調した。
「そうかな? わたしは全然平気!」
 葉月は元運動部なだけに慣れっこなようだ。吹奏楽の運動部に近いが文化部っぽい側面が出た。
「こう暑いと集中力も持たないね。そろそろ休憩にしよっか」
 あすかが言うと、低音パートは休憩に入った。
「緑、飲み物買ってきますけど、皆さんの分も買ってきましょうか?」
 コンバスの緑が言うと、
「おっ、気がきくねえ、さふぁいあ川島!」
「緑ですぅ! えっと、何かご希望ありますか?」
「うーん、あたしはスポドリ」
「あ、わたしもそれで」
 あすかのオーダーに、同ユーフォ担当の夏紀も乗っかった。
「後藤先輩たちは、どうなさいますか?」
「俺はお茶かな……」
「わたしも。ごめんねー、ありがとう」
 後藤と梨子のオーダーも確定。
「久美子ちゃんと葉月ちゃんは?」
「あ、いいよ、わたしも行くから」
「わたしも!」
 久美子と葉月は緑にだけ重荷を背負わせるわけにはいかないと考えて、緑について行くことにした。
「ありがとうございます、久美子ちゃん、葉月ちゃん。じゃあ買ってきますね」
「はいよー、行ってらっしゃーい」


「ほんと暑いよねえ」
「そうですねー。葉月ちゃんはすごいです」
 久美子と緑は汗を拭きながら足取り重く歩く。
「そう? テニスやってたからかな」
 葉月も汗はかいているが、だるさはなく、むしろスッキリしていた。
「わたしなんてずっと吹奏楽だもんなあ」
「緑もです……。ちょっと運動不足でしょうか?」
「そんなことないと思うよ。吹奏楽だってめっちゃ大変だし」
 久美子と緑は運動部経験がないのでよく分からないが、葉月がそう言ったので少し安心した。
 三人はオーダーを受けたぶんと、自分たちの分を買って教室に戻った。


「な、何してるんですか先輩たち」
「いいところに帰ってきた黄前ちゃん!」
 久美子たちが教室に戻ると何故か窓際に全員集まっている。
「お、黄前ちゃん、そこにいるから!」
 いつもはどっしりしているタイプの夏紀が動揺した声で久美子に「それ」を伝えた。
「夏紀先輩?」
 ふと、夏紀が見つめているところを見ると、黒くて、長い触覚を持ち、カサカサ動くヤツがいた。
「ひっ!」
「夏になるとGが出るんだよ、黄前ちゃん!」
「なんでそんなカッコよく言うんですか!」
 あすかにツッコんだ久美子だが、こちらに近づいてきたのを見て慌てて教室を出た。
「く、く、久美子ちゃん、緑、虫は苦手で」
「わ、わたしも苦手!」
 久美子が葉月を見ると茫然自失になっていた。
「葉月ちゃん……!」
 呼びかけても返事はない。
 ただのチューバ奏者のようだ。
「黄前ちゃん、美化係としてのミッションだよ、さあ、退治しちゃって!」
「いやいやいや! 無理ですって!」
 教室内窓際と大きく距離をとって、廊下側窓際に両陣営が睨み合う。
「あ! わたしたち、殺虫スプレーもらってきます! 葉月ちゃん、行きますよ!」
「え!? ちょっと緑ちゃん!?」
 緑は葉月を連れて全力で教室から遠ざかった。
「さあ、どうするの、黄前ちゃん……」
「うっ……」

 久美子が泣きそうな顔になる。
 するとヤツは方向を転換して、あすかたちのほうへ向かった。
「あすか先輩、来てますよ!」
 夏紀が告げると、
「フッフッフッ、そんな動きで我々人間に勝てると思ってるのか!」
 と言いながら、決して後ろを向かないでカニ歩きをしながらヤツの来る方向とは逆に動いた。それにつられて他の部員も同じように動く。
「って、逃げてるだけじゃないですか!」
「何を言うか、黄前ちゃん。こうしてヤツのスタミナを奪うというあたしの高尚な戦術じゃない。分かる?」
「いや、わたしに処理を押し付けようとする安易な戦術ですよね? わっ!」
 久美子は近くに来ていたあすかに腕を引っ張られて、部員集団の中に引きずり込まれた。
 その後、ヤツと部員の、そして久美子とあすかの一進一退の攻防が続き、部員は教室を右往左往していた。
 ヤツからすれば、さぞ気分が良かったに違いない。
「久美子ちゃん!」
 緑の声が聞こえ、久美子が声のした方を向くと、緑と葉月の他に何故か麗奈がいた。
「れ、麗奈?」
「何してるの? みんなして」
「麗奈ちゃん。とりあえずトランペットはわたしに」
「え? あ、うん」
 緑に言われるがまま、麗奈はトランペットを緑に渡す。
「それでこちらを」
 麗奈が代わって持たされたものには、「Gキラープロ」と書いてあった。
「れ、麗奈、来た!」
 久美子が恐怖と焦りの声を上げる。
「え? ……ああ」
 自分が持たされたものと、目の前の状況を見て、合点がいた麗奈はヤツのもとへ一歩一歩近づく。そして、「Gキラープロ」のトリガーに人差し指をかけ、ゆっくりと引いた。


 プシュー!


 プシュ、プシュ!


「これで、いい?」
 一瞬の沈黙の後、部員全員からホッとした息が漏れた。
「高坂さん、あなたこそ、真の美化係だよ」
「え、あ、ありがとうございます。でもわたしは楽器管理係です」
 あすかのボケが入った褒め言葉に、真剣に答える麗奈。その様子を見ていた久美子は思わず笑みをこぼしてしまった。
「麗奈ちゃん、ありがとう! 信じてました!」
 緑が麗奈に抱きつく勢いで駆け寄って腕をとった。
「う、うん」
「麗奈、虫大丈夫なの?」
 その後ろから近づいた久美子が問うと、
「割と。どうせ退治しないと、後で困るし」
「……ごもっともです」
 葉月はようやくまともな意識を回復して、
「高坂さんは特別だよ、うん」
 と、本気の口調でつぶやいた。
「さーて、そろそろ練習再開するよー」
 死体となったヤツをトイレから大量に持ってきたトイレットペーパーで包みゴミ箱に捨てた後、あすかが手を叩いて言った。
「って、ひどいね、こりゃ」
 正気になってから見ると、右往左往していた影響で楽譜が散らばってしまっていた。
「直さないと。あーー」
 運の悪いことに、このタイミングで滝が入って来た。
「……何ですか、これ?」
 その後、粘着されたのは言うまでもない。


「えーっと、この曲のキーはGだね」
 とあすかが言うと、部員全員がビクッと肩を震わせた。
「あー、ごめんごめん」
 あれ以来、低音パートはやたらとGという言葉に敏感になってしまった。
 というわけでその日以降、しばらくの間は低音パート内でのみ「Gのキー」を「あのキー」と言い換えることになったのだった。


 ーーカサカサ、カサカサ。



 そして、次の曲が始まるのです。

あとがき的なもの

書いていて楽しかったです(笑)

わが家にですね、出没したらしいのですが、一度取り逃がしてしまい、戦々恐々としていたという超プライベートな理由でこの話を思いつきました。

なんか麗奈って、こういうの平気そうじゃないですか?

久美子とあすか先輩のやり取りはテンポがよくて、非常に好みです。もともと会話劇みたいなのが好きなので。多少その雰囲気は出せましたかね?
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