青い鳥文庫のマーケティング戦略とは?
青い鳥文庫と言えば、児童向け文庫の代表格です。そんな青い鳥文庫は出版事業が難しいと言われる中、比較的堅調な業績を残しています。
(直近データが見つからなかったので現在はどうかはっきりしません。2012年に角川つばさ文庫にシェア1位を奪われたようですが、その後の推移は不明です。ただ散見される分析記事を見るとつばさ文庫、青い鳥文庫の2強という感じのようです)
今回はそんな青い鳥文庫の試みを記した本の内容を一部ご紹介したいと思います。出版系の販売をしている方には少なからず参考になると思います!
1.基本コンセプト
青い鳥文庫の基本的なコンセプトはブランドの維持と新規顧客の窓口を持っていることです。まあ、そんなに変わったことはしていませんね。基本が大事ということでしょうか。
ざっくり言ってしまうと以下の二つがポイントです。
ブランド=「子供が初めて自分で選んで自分で買う本」
新規顧客=擬似口コミとファンとの接点の多さ
もう少し詳しく考えてみましょう。
2.ターゲティング
ターゲットはブランドからおのずと導かれます。
子供が自分のお金で本を買えるようになるのはどれくらいでしょうか。個人差はあるでしょうが、そういう社会的活動に自分で意思決定をして参与するようになるのは小学校の中学年くらいでしょう。ということで青い鳥文庫はレーベルとしてターゲットを小学校中学年かつ女子に設定しています。実際はもう少し幅が広く、小学3年生~中学生ぐらいまでのようです。
個人や小数活動のことを考えると、レーベルそのものでターゲティングをすることは今後極めて重要になると思われます。大衆に受けて大ヒットするには又吉さんのようにすごいインパクトを残すか、メディアミックスするかしかほとんど道はありません。この宝くじのような可能性に投資するよりかは、確実に顧客を設定し、数はいなくても購買率が高くなるターゲットを明確化することが重要です。
なお、レーベルを個人と言いかえれば、個人でも十分も応用も効くと思われます。
3.プロモーション
プロモーションに関しては特に奇抜なことを行っているわけではありません。基本に忠実という感じです。
特に紹介されていたのはWebサイトです。
Webサイトは各作品ごとに商品紹介ページが設けられています。
構成としては、
①シリーズの紹介(シリーズあらすじ)
②あらすじ(本購入ページ、感想記入ページ、試し読みの各リンク)
③お知らせ(キャラからという体裁)
④シリーズその他既刊
⑤おたより(感想)
⑥企画
⑦同作者の他作
という感じです。
(これは「黒魔女さんが通る!!」のもの。本によって多少は異なります)
変わった点としては、「感想」、「企画」の二点でしょうか。
感想は通常のテキストベースと直筆のものが交互に並んでいます。直筆を載せることはあまりないので面白い試みですね。親近感が湧く気がします。
企画については作品によってですが、「黒魔女さんが通る!!」ではキャラと作中で使う魔法を読者から募集しています。実際に作者の方が選考するようです。使われた場合は巻末に名前が載るというかたちですね。
こういうものがあると、自分も作品づくりに参加できた気分になって嬉しいと思いますし、友達に教えますよね。「わたしが考えたのが載ってるの!」って。こうすれば数の上積みが狙えます。
4.ファンづくり
この辺は細かい話になってしまうので概略だけ。
基本的には「作家や編集を自分たちの近くにある存在」だと認識してもらうことが目的になって行われています。
ファンクラブはもちろん、ジュニア編集者制度などが独特です。選ばれた子にはゲラ(試し刷り)が送られてくるので感想や疑問点などを書いて送ります。やった子は作品への参加感が得られますし、出版社側からすると出版前に生のフィードバックが得られるため効果が高そうな制度です。
それ以外にはイベント、サイン会、書店でのコミュニケーションでも前述の目的を達成できるように工夫がなされているようです。
5.まとめ
ブランディングやマーケティングは色々小難しい話もあったりしますが、端的に言ってしまえば「自分ごと」として捉えてもらうようにするのが重要なんだろうと思います。
消費者を「捕まえる」のではなく、ファンを「つくる」ことが大事なんだなあと思わされる例でした。
ではでは!
【参考文献】
田中洋著 『大逆転のブランディング-どん底から成長した13社に学ぶ』(講談社 2010)
(※参照ページはP102~115。講談社から出た本が講談社内のレーベルについて書いているので若干誇張されている可能性はあります)
(直近データが見つからなかったので現在はどうかはっきりしません。2012年に角川つばさ文庫にシェア1位を奪われたようですが、その後の推移は不明です。ただ散見される分析記事を見るとつばさ文庫、青い鳥文庫の2強という感じのようです)
今回はそんな青い鳥文庫の試みを記した本の内容を一部ご紹介したいと思います。出版系の販売をしている方には少なからず参考になると思います!
1.基本コンセプト
青い鳥文庫の基本的なコンセプトはブランドの維持と新規顧客の窓口を持っていることです。まあ、そんなに変わったことはしていませんね。基本が大事ということでしょうか。
ざっくり言ってしまうと以下の二つがポイントです。
ブランド=「子供が初めて自分で選んで自分で買う本」
新規顧客=擬似口コミとファンとの接点の多さ
もう少し詳しく考えてみましょう。
2.ターゲティング
ターゲットはブランドからおのずと導かれます。
子供が自分のお金で本を買えるようになるのはどれくらいでしょうか。個人差はあるでしょうが、そういう社会的活動に自分で意思決定をして参与するようになるのは小学校の中学年くらいでしょう。ということで青い鳥文庫はレーベルとしてターゲットを小学校中学年かつ女子に設定しています。実際はもう少し幅が広く、小学3年生~中学生ぐらいまでのようです。
個人や小数活動のことを考えると、レーベルそのものでターゲティングをすることは今後極めて重要になると思われます。大衆に受けて大ヒットするには又吉さんのようにすごいインパクトを残すか、メディアミックスするかしかほとんど道はありません。この宝くじのような可能性に投資するよりかは、確実に顧客を設定し、数はいなくても購買率が高くなるターゲットを明確化することが重要です。
なお、レーベルを個人と言いかえれば、個人でも十分も応用も効くと思われます。
3.プロモーション
プロモーションに関しては特に奇抜なことを行っているわけではありません。基本に忠実という感じです。
特に紹介されていたのはWebサイトです。
Webサイトは各作品ごとに商品紹介ページが設けられています。
構成としては、
①シリーズの紹介(シリーズあらすじ)
②あらすじ(本購入ページ、感想記入ページ、試し読みの各リンク)
③お知らせ(キャラからという体裁)
④シリーズその他既刊
⑤おたより(感想)
⑥企画
⑦同作者の他作
という感じです。
(これは「黒魔女さんが通る!!」のもの。本によって多少は異なります)
変わった点としては、「感想」、「企画」の二点でしょうか。
感想は通常のテキストベースと直筆のものが交互に並んでいます。直筆を載せることはあまりないので面白い試みですね。親近感が湧く気がします。
企画については作品によってですが、「黒魔女さんが通る!!」ではキャラと作中で使う魔法を読者から募集しています。実際に作者の方が選考するようです。使われた場合は巻末に名前が載るというかたちですね。
こういうものがあると、自分も作品づくりに参加できた気分になって嬉しいと思いますし、友達に教えますよね。「わたしが考えたのが載ってるの!」って。こうすれば数の上積みが狙えます。
4.ファンづくり
この辺は細かい話になってしまうので概略だけ。
基本的には「作家や編集を自分たちの近くにある存在」だと認識してもらうことが目的になって行われています。
ファンクラブはもちろん、ジュニア編集者制度などが独特です。選ばれた子にはゲラ(試し刷り)が送られてくるので感想や疑問点などを書いて送ります。やった子は作品への参加感が得られますし、出版社側からすると出版前に生のフィードバックが得られるため効果が高そうな制度です。
それ以外にはイベント、サイン会、書店でのコミュニケーションでも前述の目的を達成できるように工夫がなされているようです。
5.まとめ
ブランディングやマーケティングは色々小難しい話もあったりしますが、端的に言ってしまえば「自分ごと」として捉えてもらうようにするのが重要なんだろうと思います。
消費者を「捕まえる」のではなく、ファンを「つくる」ことが大事なんだなあと思わされる例でした。
ではでは!
【参考文献】
田中洋著 『大逆転のブランディング-どん底から成長した13社に学ぶ』(講談社 2010)
(※参照ページはP102~115。講談社から出た本が講談社内のレーベルについて書いているので若干誇張されている可能性はあります)