第3シリーズ 「福」業を考えてみませんか?
第3回 職業選択の自由を妨げているもの
1.直接的な要因
直接的な要因は前回も指摘した給料の額です。労働者モデル(賃労働モデル)が主流ですから当然給料の良し悪しは選択に大きな影響を及ぼしています。
逆に言えば、どの業種でも給料が高いのならば職業選択の自由は保障されていると言えますね。
直接的な要因は前回も指摘した給料の額です。労働者モデル(賃労働モデル)が主流ですから当然給料の良し悪しは選択に大きな影響を及ぼしています。
逆に言えば、どの業種でも給料が高いのならば職業選択の自由は保障されていると言えますね。
経済学の基本的な考えとして、インフレへの道があります。
何らかの理由で収益が上がる
↓
給料が上がる
↓
需要が増える
↓
物価が上がる
↓
収益が上がる
↓
……以降、ループ
というものですね。
今(2016/2月)のいわゆるアベノミクスという経済政策はこれを起こそうというものだと基本的には言えます(実際色々ありますが、ここでは省略します)。
ですが、現実社会を見るとどうにもそうは言えないのではないかという感じです。なぜ、給料が上がらないのでしょうか。私は、「ビジネス構造」・「経済成長」がその要因であると考えています。それについて見ていきましょう。
何らかの理由で収益が上がる
↓
給料が上がる
↓
需要が増える
↓
物価が上がる
↓
収益が上がる
↓
……以降、ループ
というものですね。
今(2016/2月)のいわゆるアベノミクスという経済政策はこれを起こそうというものだと基本的には言えます(実際色々ありますが、ここでは省略します)。
ですが、現実社会を見るとどうにもそうは言えないのではないかという感じです。なぜ、給料が上がらないのでしょうか。私は、「ビジネス構造」・「経済成長」がその要因であると考えています。それについて見ていきましょう。
2.給料が出る基本メカニズム
民間の場合、給料を出すには企業が利益を出す必要があります(出ていなくても払う義務がありますが)。この利益を出すには売上をあげ、コストを削る必要があるのは自明のことですよね。
売上をあげるには大きく二つの方法があります。売上数をあげるか、売上が少なくても利益が出るよう単価をあげるかです。一般的な商業店は売上数を重視するので価格競争に突入していきます。一方、ブランド志向が強い場合は単価をあげる方向に動くことが多いです。
また、コスト削減にも二つ方法があります。一つは商品関連のコストを削減すること、もう一つは人件費を削減することです。商品関連というのは原価や流通などで出来るだけコストがかからないよう努力することですが場合によっては品質に影響を及ぼします。人件費はそのものズバリで、今の日本では至るところで見られるコスト削減方法です。
これらは誰が考えてもスッと理解できることですが、業種によってはそうもいかない場合があります。
民間の場合、給料を出すには企業が利益を出す必要があります(出ていなくても払う義務がありますが)。この利益を出すには売上をあげ、コストを削る必要があるのは自明のことですよね。
売上をあげるには大きく二つの方法があります。売上数をあげるか、売上が少なくても利益が出るよう単価をあげるかです。一般的な商業店は売上数を重視するので価格競争に突入していきます。一方、ブランド志向が強い場合は単価をあげる方向に動くことが多いです。
また、コスト削減にも二つ方法があります。一つは商品関連のコストを削減すること、もう一つは人件費を削減することです。商品関連というのは原価や流通などで出来るだけコストがかからないよう努力することですが場合によっては品質に影響を及ぼします。人件費はそのものズバリで、今の日本では至るところで見られるコスト削減方法です。
これらは誰が考えてもスッと理解できることですが、業種によってはそうもいかない場合があります。
3.資本主義の機能不全―保育園の場合
それがよく分かるのが保育園です。待機児童の問題などで一種社会問題化していますが、その理由は保育園というものがビジネスに不向きな構造であることにあります。
そもそも保育園がターゲットとするユーザーは共働きの家庭です。夫婦がどちらもバリバリ働きたいというパターンもあるでしょうが、多くは片方の収入だけでは余裕がないことに起因して共働きになっていると考えられます。ということは、富裕層は保育園ユーザーになりにくいので、必然的に非富裕層をターゲットとすることになります。非富裕層をターゲットとする以上、単価をあげることは難しいです。となると、売上数(園児数)を増やす必要がありますが、法的に保育士の数による制限がかかるので好き勝手に増やすことはできません。ゆえに保育園は売上額を高く見積もることが非常に難しいビジネスということになります。
売上額を低く見積もらざるを得ないとなると、コスト削減に手をつけることになります。とはいえ、商品となるサービス内容はあまり削るところがないので、人件費削減にその手法が求められる可能性が高いです。すると、保育士の給料が下がります。勤務時間も長く、責任も重大であるのに給料が下がると辞める人が出てきます。辞める人が出てくると保育可能園児数が減り、売上が減ります。売上が減るとまた給料が下がる……というように負のスパイラルに突入していく可能性がでてきます。
今描いたように、現実社会では給料が上がるもしくは高いことが明らかに期待できない業種が確実に存在しているのです。これらの業種については、選択希望を持っていても、環境によっては選択できないということが十分考えられます。その現れがよく言われる「人手不足」なのです。
それがよく分かるのが保育園です。待機児童の問題などで一種社会問題化していますが、その理由は保育園というものがビジネスに不向きな構造であることにあります。
そもそも保育園がターゲットとするユーザーは共働きの家庭です。夫婦がどちらもバリバリ働きたいというパターンもあるでしょうが、多くは片方の収入だけでは余裕がないことに起因して共働きになっていると考えられます。ということは、富裕層は保育園ユーザーになりにくいので、必然的に非富裕層をターゲットとすることになります。非富裕層をターゲットとする以上、単価をあげることは難しいです。となると、売上数(園児数)を増やす必要がありますが、法的に保育士の数による制限がかかるので好き勝手に増やすことはできません。ゆえに保育園は売上額を高く見積もることが非常に難しいビジネスということになります。
売上額を低く見積もらざるを得ないとなると、コスト削減に手をつけることになります。とはいえ、商品となるサービス内容はあまり削るところがないので、人件費削減にその手法が求められる可能性が高いです。すると、保育士の給料が下がります。勤務時間も長く、責任も重大であるのに給料が下がると辞める人が出てきます。辞める人が出てくると保育可能園児数が減り、売上が減ります。売上が減るとまた給料が下がる……というように負のスパイラルに突入していく可能性がでてきます。
今描いたように、現実社会では給料が上がるもしくは高いことが明らかに期待できない業種が確実に存在しているのです。これらの業種については、選択希望を持っていても、環境によっては選択できないということが十分考えられます。その現れがよく言われる「人手不足」なのです。
4.インフレの弊害
経済学では問題があるでしょうが、個人の問題のみを論じるのであれば、インフレはいいものとは言えません。
インフレは物価が上がることを指し、一般的には景気の回復、上昇になりますのでいいことになります。ですが、物価が上がるということはあるレベルの生活をするのに必要な額も一緒に上がるということになります。
賃労働をしている場合には、通常インフレによって給料のベースが上がっていくのであまり問題にはなりません。
ですが、非賃労働の人々や賃労働でも非正規の人の場合は生活が苦しくなるケースがあります。ものによってはインフレと収入の相関が薄くなるからです(物価は上がっても収入額があがらない)。
こうなるとますます正規での給料が重視されていきます。しかし、正規の人員を募集しない・できない業種を希望する場合はそれを無視する必要が出てきます。この選択はなかなか難しいでしょう。こうして職業選択の自由が結果的に制限されていってしまうのです。
経済学では問題があるでしょうが、個人の問題のみを論じるのであれば、インフレはいいものとは言えません。
インフレは物価が上がることを指し、一般的には景気の回復、上昇になりますのでいいことになります。ですが、物価が上がるということはあるレベルの生活をするのに必要な額も一緒に上がるということになります。
賃労働をしている場合には、通常インフレによって給料のベースが上がっていくのであまり問題にはなりません。
ですが、非賃労働の人々や賃労働でも非正規の人の場合は生活が苦しくなるケースがあります。ものによってはインフレと収入の相関が薄くなるからです(物価は上がっても収入額があがらない)。
こうなるとますます正規での給料が重視されていきます。しかし、正規の人員を募集しない・できない業種を希望する場合はそれを無視する必要が出てきます。この選択はなかなか難しいでしょう。こうして職業選択の自由が結果的に制限されていってしまうのです。
5.労働に関する同調規範
また、日本の場合は「普通」や「世間体」が幅をきかせる傾向にあることも自由を妨げる一因になっていると思われます。
仕事とはどこかに出社することという意識が強く、苦労して汗水垂らさなければ、お金を得る資格がないというような考えです。
現行の労働者モデルではずっと書いているように自分が望んだ職業につけることはあまり多くありません(自由が制限されているので)。ゆえに、「嫌々」やっている人が一定数を占めています。「本当か?」と思ったら、月50万の支給があっても今の仕事をやるかと自分や人に聞いてみてください。多くの人はそれなら仕事は辞めるというでしょう。
ゆえに彼らは(本人としては)苦労している対価として給料をもらっているという感覚になり、それがいつしか苦労しなければ給料をもらう資格はないというような考えにいたりがちです。インフレ(経済成長)が進み、生活維持水準が上がれば上がるほどこの傾向は強まります。
このため労働者モデルを採用しないという選択肢や「好きなことで仕事を」という考え方が受け入れられにくいのです。
ある程度強い意思やしっかりした考え(人生哲学)があればいいのですが、そうでない場合はどうしても世間体に流されてしまい、自分が本当にやりたいことに背を向けてしまうということが多いのではないでしょうか(もっとも、アリの集団分析ではありませんが、半分以上の人は外向的で流されることを望んでいる面もあります)。
また、日本の場合は「普通」や「世間体」が幅をきかせる傾向にあることも自由を妨げる一因になっていると思われます。
仕事とはどこかに出社することという意識が強く、苦労して汗水垂らさなければ、お金を得る資格がないというような考えです。
現行の労働者モデルではずっと書いているように自分が望んだ職業につけることはあまり多くありません(自由が制限されているので)。ゆえに、「嫌々」やっている人が一定数を占めています。「本当か?」と思ったら、月50万の支給があっても今の仕事をやるかと自分や人に聞いてみてください。多くの人はそれなら仕事は辞めるというでしょう。
ゆえに彼らは(本人としては)苦労している対価として給料をもらっているという感覚になり、それがいつしか苦労しなければ給料をもらう資格はないというような考えにいたりがちです。インフレ(経済成長)が進み、生活維持水準が上がれば上がるほどこの傾向は強まります。
このため労働者モデルを採用しないという選択肢や「好きなことで仕事を」という考え方が受け入れられにくいのです。
ある程度強い意思やしっかりした考え(人生哲学)があればいいのですが、そうでない場合はどうしても世間体に流されてしまい、自分が本当にやりたいことに背を向けてしまうということが多いのではないでしょうか(もっとも、アリの集団分析ではありませんが、半分以上の人は外向的で流されることを望んでいる面もあります)。
6.まとめ
このように、客観的な給料という指標の裏に「ビジネス構造」や「同調規範」、「インフレによって生じる生活水準までのハードル上昇」が存在することで職業選択の自由は制限されていると言えるのです。
このように、客観的な給料という指標の裏に「ビジネス構造」や「同調規範」、「インフレによって生じる生活水準までのハードル上昇」が存在することで職業選択の自由は制限されていると言えるのです。
しかし、私たち個人ではビジネス構造や同調規範を変えることは極めて難しいです。このような変えられないマイナスが存在するのなら、それを相殺、もしくは緩和していく別の考え方を足し算していく必要があります。
次回はそれを見ていくことにしましょう。
次回はそれを見ていくことにしましょう。