序破急で魅力的な紹介文を書こう!
作品を発表したりしていると、色々紹介する場面が多いですよね。それは自己紹介のときもありますし、作品を紹介するときだったりします。しかし、どのような文章を書けば読んだ人に興味を持ってもらえる紹介文となるのでしょう?
例えば、作品の紹介をするときにあらすじだけ書いてあることも多いですが、あれで興味を持ってもらえるのでしょうか。作者と受け手に共通認識があれば別ですが、なかなか難しいのではないかなあ、と私は思います。
そこで、今回は興味をひく文章にする際によく使われる序破急というフレームワークについて説明しようと思います。これで今日からあなたも紹介文マスターになれるかも!?
1.序破急とは?
序破急とは、観阿弥という能を大成した人物が考えだした物語のよいリズムのことです。
似た用語で小説を書く方はよく「起承転結が~」と言いますが、これは漢詩の定型詩からきているので、実は小説には適用しにくいです。実際、アメリカなどでは三幕構成と言われるものがプロット構成の基本フレームワークになっています。四つでは機能が重複するので理解が難しいからですね(具体的には起と承の区別がつけにくいとよく言います)。
それなら、三幕構成を使えばいいじゃんと思われるかもしれませんが、三幕構成も何やらたくさん要素があるので、慣れるまでが大変です。そこで、三幕構成の日本語版とでも言える序破急を使おうではないかというわけです。序破急は三幕構成に比べるとシンプルです。
とはいえ、今回はプロットを考えるなんて話ではなく、紹介文にその技術を応用しようというお話です。
でも、どうして紹介文に物語の技術を使うのでしょうか。答えは簡単で、物語調の方が引き込みやすいからです。歴史教科書の文章はつまらないですが、大河ドラマは面白いですよね(ドラマによりますが……汗)。
では、序破急とは具体的にはどんなものなのか。ざっくり書いていきましょう。
2.序破急の要素
序破急はそれぞれ以下のような要素が入っていると好ましいと考えられています。
<序>「ん?」の段階
・必要最低限の情報提供。
・受け手に「ん? 何だろう?」とクエスチョンを持ってもらえるような内容に。
(Q&AのQをここで与えます)
・受け手の気持ちを代弁すると、そう思ってもらいやすいかも。
<破>「え!」の段階
・本題。話のメイン。
・受け手に「え! そんなことが起こるの!」と感じてもらう。
・具体例やエピソードを持ち出して共感を誘うのがコツ。
<急>「なるほど~」の段階
・テーマのお話。伝えたいこと。
・受け手にとっての位置付け(価値)の明確化。
・「破」の具体例を一般化した抽象的なことを語ってしめる。
※各段階の「?」「!」「~」の部分はページ下記参考文献を参考にしています。
3.実際に書いて見る
要素だけ言われれてもぴんとこないと思いますので、序破急を使って実際に紹介文を考えてみました。今回は「歴史を学ぶ意義とはなんだろう?」という簡単なプレゼンをしているというような設定をふんわり頭に浮かべて書いています。
――――
『題:歴史は魔法使いだ!』
▼
私は歴史が好きでして、気になるとすぐにググって調べてしまいます。おかげでウィキペディアを神様のようにあがめている始末なのですが、私のような人間はおそらく少数だろうと思います。
多くの方は「過去のことなんか知って何になるんだ」、「歴史って暗記でしょ?」なんて思っているのではないでしょうか。
しかし、歴史には大きな意味がありますし、暗記というのはテストでいい点をとるためだけのもので歴史の面白さのほんの端っこしかおさえられません。今から私が学校教育でつまらなくなってしまった歴史学習を面白いものに変えてみせましょう!
▲
▼
突然ですが、こんなところにぼろいノートがあります。紙は黄ばんでいてあまり触りたくないぐらいです。今が大掃除の時期ならゴミ箱行き間違いなしです。
ですが、そんな黄ばんだぼろいノートが「両親の恋人時代の交換日記」だったらどうでしょう? 読んでみたくありませんか? 私なら色々な意味でニヤニヤが止まりません。きっと黒歴史がつまっていますから!
ところで、この「交換日記であった」という事実はまさにこのノートの歴史です。歴史を知ることで「ぼろい触りたくもないノート」があっという間に「読んでみたいもの」に様変わりしましたね。
このように歴史は「現在の価値」を大変身させる魔法使いなのです!
▲
▼
すべての物事には様々なスパン、様々な次元での歴史があります。それらを知ることで今をより鮮やかに見ることができるようになります。
世界では歴史認識による色々ないさかいが起こっていますよね。それは歴史という魔法があまりに強力であることの裏返しです。でも、歴史には多数の側面があります。魔法の効力は呪文によりけりなのと同じように。
もしあなたが「今を大切に生きたい」、「今は退屈だ」と思っているなら、ぜひ歴史という魔法をあなたが目にしている世界にかけてみてください。それも色んな種類をたくさん。
そうすれば、モノクロだった世界がカラフルに見えるようになるでしょう。歴史を学ぶということはいつもの日常を何倍も面白くする可能性を秘めた、素晴らしいものなのです! 皆さんもお試しあれ!
▲
――――
いかがでしょう。ちょっと大げさに書いたところもありますが、なんとなく分かっていただけたでしょうか。本当は配分も気にすべきなのでしょうが今回はあまり気にしてません。
4.小説の紹介ならどうなる?
今までの内容を小説の紹介にあてはめるのなら、以下のような感じになるかなあと思います。
<序>
・著者名や作品名、カテゴリーなど基本情報
・読者の生活の中での不安や不満の代弁
<破>
・小説のあらすじ紹介(代弁とリンクさせる)
・山場ぐらいまでを軽く触れる
<急>
・この小説を読むと読者はどのような思いをもつか
・読者にとってこの小説はどんな存在になるか
5.おわりに
というわけで、今回は序破急を使って魅力的な紹介文を考えてみるという内容をお届けしました。色々練習してみるといいかもしれませんね。私もやってみます。
それでは今回はここまで!
【参考文献】
平野秀典著 『感動3.0 自分らしさのつくり方』(日本経済新聞出版 2010)
例えば、作品の紹介をするときにあらすじだけ書いてあることも多いですが、あれで興味を持ってもらえるのでしょうか。作者と受け手に共通認識があれば別ですが、なかなか難しいのではないかなあ、と私は思います。
そこで、今回は興味をひく文章にする際によく使われる序破急というフレームワークについて説明しようと思います。これで今日からあなたも紹介文マスターになれるかも!?
1.序破急とは?
序破急とは、観阿弥という能を大成した人物が考えだした物語のよいリズムのことです。
似た用語で小説を書く方はよく「起承転結が~」と言いますが、これは漢詩の定型詩からきているので、実は小説には適用しにくいです。実際、アメリカなどでは三幕構成と言われるものがプロット構成の基本フレームワークになっています。四つでは機能が重複するので理解が難しいからですね(具体的には起と承の区別がつけにくいとよく言います)。
それなら、三幕構成を使えばいいじゃんと思われるかもしれませんが、三幕構成も何やらたくさん要素があるので、慣れるまでが大変です。そこで、三幕構成の日本語版とでも言える序破急を使おうではないかというわけです。序破急は三幕構成に比べるとシンプルです。
とはいえ、今回はプロットを考えるなんて話ではなく、紹介文にその技術を応用しようというお話です。
でも、どうして紹介文に物語の技術を使うのでしょうか。答えは簡単で、物語調の方が引き込みやすいからです。歴史教科書の文章はつまらないですが、大河ドラマは面白いですよね(ドラマによりますが……汗)。
では、序破急とは具体的にはどんなものなのか。ざっくり書いていきましょう。
2.序破急の要素
序破急はそれぞれ以下のような要素が入っていると好ましいと考えられています。
<序>「ん?」の段階
・必要最低限の情報提供。
・受け手に「ん? 何だろう?」とクエスチョンを持ってもらえるような内容に。
(Q&AのQをここで与えます)
・受け手の気持ちを代弁すると、そう思ってもらいやすいかも。
<破>「え!」の段階
・本題。話のメイン。
・受け手に「え! そんなことが起こるの!」と感じてもらう。
・具体例やエピソードを持ち出して共感を誘うのがコツ。
<急>「なるほど~」の段階
・テーマのお話。伝えたいこと。
・受け手にとっての位置付け(価値)の明確化。
・「破」の具体例を一般化した抽象的なことを語ってしめる。
※各段階の「?」「!」「~」の部分はページ下記参考文献を参考にしています。
3.実際に書いて見る
要素だけ言われれてもぴんとこないと思いますので、序破急を使って実際に紹介文を考えてみました。今回は「歴史を学ぶ意義とはなんだろう?」という簡単なプレゼンをしているというような設定をふんわり頭に浮かべて書いています。
――――
『題:歴史は魔法使いだ!』
▼
私は歴史が好きでして、気になるとすぐにググって調べてしまいます。おかげでウィキペディアを神様のようにあがめている始末なのですが、私のような人間はおそらく少数だろうと思います。
多くの方は「過去のことなんか知って何になるんだ」、「歴史って暗記でしょ?」なんて思っているのではないでしょうか。
しかし、歴史には大きな意味がありますし、暗記というのはテストでいい点をとるためだけのもので歴史の面白さのほんの端っこしかおさえられません。今から私が学校教育でつまらなくなってしまった歴史学習を面白いものに変えてみせましょう!
▲
▼
突然ですが、こんなところにぼろいノートがあります。紙は黄ばんでいてあまり触りたくないぐらいです。今が大掃除の時期ならゴミ箱行き間違いなしです。
ですが、そんな黄ばんだぼろいノートが「両親の恋人時代の交換日記」だったらどうでしょう? 読んでみたくありませんか? 私なら色々な意味でニヤニヤが止まりません。きっと黒歴史がつまっていますから!
ところで、この「交換日記であった」という事実はまさにこのノートの歴史です。歴史を知ることで「ぼろい触りたくもないノート」があっという間に「読んでみたいもの」に様変わりしましたね。
このように歴史は「現在の価値」を大変身させる魔法使いなのです!
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すべての物事には様々なスパン、様々な次元での歴史があります。それらを知ることで今をより鮮やかに見ることができるようになります。
世界では歴史認識による色々ないさかいが起こっていますよね。それは歴史という魔法があまりに強力であることの裏返しです。でも、歴史には多数の側面があります。魔法の効力は呪文によりけりなのと同じように。
もしあなたが「今を大切に生きたい」、「今は退屈だ」と思っているなら、ぜひ歴史という魔法をあなたが目にしている世界にかけてみてください。それも色んな種類をたくさん。
そうすれば、モノクロだった世界がカラフルに見えるようになるでしょう。歴史を学ぶということはいつもの日常を何倍も面白くする可能性を秘めた、素晴らしいものなのです! 皆さんもお試しあれ!
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いかがでしょう。ちょっと大げさに書いたところもありますが、なんとなく分かっていただけたでしょうか。本当は配分も気にすべきなのでしょうが今回はあまり気にしてません。
4.小説の紹介ならどうなる?
今までの内容を小説の紹介にあてはめるのなら、以下のような感じになるかなあと思います。
<序>
・著者名や作品名、カテゴリーなど基本情報
・読者の生活の中での不安や不満の代弁
<破>
・小説のあらすじ紹介(代弁とリンクさせる)
・山場ぐらいまでを軽く触れる
<急>
・この小説を読むと読者はどのような思いをもつか
・読者にとってこの小説はどんな存在になるか
5.おわりに
というわけで、今回は序破急を使って魅力的な紹介文を考えてみるという内容をお届けしました。色々練習してみるといいかもしれませんね。私もやってみます。
それでは今回はここまで!
【参考文献】
平野秀典著 『感動3.0 自分らしさのつくり方』(日本経済新聞出版 2010)